最先端の野球理論とは →

 

 

皆さんは最先端の野球の情報を調べていますか?

野球についての研究や機材、道具などは日々進化をしています。調べる習慣をつけないとどんどん置いていかれるかもしれませんよ。

本記事では、2022年9月時点での最先端の野球理論をご紹介します。

 

 

【この記事でわかること】

1.打球の飛距離を最大化するには、ボールの少し下を打つ方が良い

2.バッティングの体幹の役割は、回旋速度の獲得と力の伝達

3.バッティングの「カベを作る」のは、エネルギーを伝達するため

     

     

     

    【目次】

     1バックスピンをかけると打球の飛距離は伸びるのか

     2カベを作って打つとは

     3.最先端を追い求めよう!

     

     

     

    1.バックスピンをかけると打球の飛距離は伸びるのか?

     フライボール革命によって、打球速度と打球角度が長打を打つためには重要というのが広まりつつあります。そのため、打球速度を高めることに加えて、ボールの下をインパクトする打球や打球にバックスピンをかける打球も重要であると言われています。

     プロ野球の選手の中には、ライナー性の打球速度の高いスイングではなく、ボールの下側を狙ったフライを打つ練習をするということも言われています。

     

     

     それでは、ボールの下側を打ちバックスピンを増やすことで、飛距離が伸びるのでしょうか。

     ボールにバックスピンをかけるためには、ボールの中心から離れた位置をインパクトすることで回転量を増加することができます。

     

     

    1.ボール中心とスイング軌道の差による打球速度と打球の回転速度

    Baseball Geeksより引用、筆者改変

     

     

     この図から分かるように、ボールの中心に近い位置をインパクトすることで打球速度が高く回転が少ない打球になります。一方、ボールの中心から離れるほど回転速度が高いが打球速度が遅い打球になります。

     

     打球速度を大きくするには、ボールの中心に向かってバットをスイングし、ボールとバットの軌道を一致させることになります。

     変化球などによっても異なりますが、ボールがホームベース付近を通過する時の角度は約5~15°下に落ちているため、ボールの中心に向かってスイングするには10°程度のアッパースイングでインパクトすることになります。

     

     しかし、このままでは、最大の飛距離を得ることはできません。

     その理由は、ボールの中心をきれいにインパクトした場合は、ボールに回転が生じずに、マグナス力とよばれる揚力が得られないため、飛距離が伸びにくくなります。

     

     

    2.スイングの軌道とボールの軌道

    Baseball Geeksより引用

     これらのことから、最大の飛距離を狙うには、アッパースイングでボール中心の少し下をインパクトする必要があります

     

     それでは、どれくらい下を打てばいいのか?

     Nathanという人の2015年の研究では、ストレートを打ち返す時には、ボール中心から6mm下を19°上向きのスイングでインパクトすると飛距離が最大化されると報告されています。

     

     6mmと聞くと、誤差程度と思う人もいるかもしれません。

     しかし、考え方を変えると、この6mmという細かい技術を投手が投げたボールに対して狙ってバッティングできるからこそ、長打を打てる打者になるのではないでしょうか。

     

     ここでさらにポイントになるのは、打球速度です。

     バレルゾーンから分かるように、打球速度が高いほど、打球角度が低くても長打につながります。ここから考えると、打球速度が高い人は、ボールの中心に近い軌道で打球しても飛距離が出やすく、打球速度が低い人は、ボールの下を打って打球角度をある程度つけた方が長打になることが分かります。

     

     

     

    .カベを作って打つとは

     バッティングの指導の中で、「カベを作る」、「体を開かない」という言葉をよく聞いていると思います。これは、打撃において体の軸(体幹)が重要であることが分かります。

     

     それでは、「カベを作る」ことによってどのような効果があるのか、またどのような動作なのでしょうか?

     

     

     まず、打撃にとって体幹がどのような役割を持っているのかを整理しましょう。

    • 体幹の回旋速度を高める
    • 力を伝えてスイング速度を高める

     

     1つ目の体幹の回旋速度を高めるとは、人を上から見た鉛直軸の体の回旋の速度のことを指します。簡単なイメージを言うと、独楽(コマ)を上から見てクルクル回る回転になります。2007年のSzymanskiの研究では、体幹を高速に回旋させることができる選手ほどスイングが速いということが明らかになっています。

     これは、踏み出し足が地面に接地した後に体幹を回旋し、このタイミングで打者は体幹で大きな回転速度を獲得する必要があります。

     

     

    3.「体が開いた」状態からの回旋(左)と「カベを作った」状態からの回旋

    Baseball Geeksより引用

     

     この図を見ると、大きく2つで異なる点は、体の向きがどっちを向いているかであり、左では1塁側に体が開いていて、右ではホームベース側に体が向いています。

     ここから、インパクトに向けて体を回旋していくと、右の「カベを作った」状態の方が回旋する量(変位)が大きく、身体の回旋の速度を高めやすくなります。

     

     ここで注意すべきポイントは、カベを作ることを意識しすぎてしまい、キャッチャー側へ体を向けすぎるとインパクトが遅れてしまう可能性が高くなります。

     

     

     現役時代に3冠王に輝いた落合博満氏は、「(前略)壁を作ることを意識せずに、体が開いても大きくバットを振りぬくことがより遠くへ打つための秘訣」と言っています。また、「インパクトまでは壁を作り、インパクト後は壁をなくすことが大切」とも話しています。

     

     まずは、バットを強く振ることが重要で、そこから技術を身につけていくことによって、より良いスイングになっていくのではないかと考えられます。

     

     

     2つ目の力を伝えてスイング速度を高めるとは、エネルギーフローという力学的エネルギーの伝達に体幹が役割を果たしているということです。

     

     これまでの研究で、バットのスイングを高めるために体幹の重要性が明らかになっています。

     バッティングにおいて、下半身で生まれたエネルギーが体幹を通じ、上肢(肩、腕、手)と伝わり、バットの速度につながります。体幹は、力の通り道であり、スイング速度に影響しています。

     

     

    4. バッティングのエネルギーの流れのイメージ

     

     このエネルギーの伝達ということを考えると、「カベを作る」という指導は、「効率的にエネルギーを伝達するためのフォーム」を指導しているのかもしれません。

     「カベを作る」ことでエネルギーをスムーズに伝達させて、スイング速度や飛距離の向上につながってくると考えられます。

     

     

     

    3.最先端を追い求めよう!

     今の時代は、技術だけを身につければ勝てる時代ではありません!

     

     フライボール革命をはじめ、研究や道具の進化によって、野球について新しい情報・知識が次々と変化している時代です。

     これまで当然であった常識が、いつの間にか当然じゃなくなっているかもしれません。

     

     投手もピッチングについての情報だけでなく、バッティングがどう変化しているのか、打者もピッチングのトレンドは何なのか、といったことも理解していきましょう。

     

     是非この機会に、野球の新常識をインプットしていただき、これからのプレーに活かしてほしいと思います!

     

     

     

    引用・参考文献

    1. Baseball Geeks:スピンをかけた打球は伸びにくい!?スイング軌道を解説(閲覧日:2022913日)
    2. Baseball Geeks:カベを作って打つってどういうこと?体幹の役割のイメージと実際(閲覧日:2022913日)
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