皆さんは、打者を打ち取るときに何を基準にして球種を選択していますか?
今回は球種によって、起こりうるリスクについて紹介し、データをもとにして球種を選択できるような投手になれるように、特に4シームに着目して深堀してみましょう。
【この記事でわかること】
1.4シームは最も投げられているが、最も失点のリスクが高い
2.4シームは他の球種に比べて、打球速度・打球速度・飛距離が大きい
3.4シームがあるからこそ、他の球種が生きる!
【目次】
1.球種による起こりうるイベント割合
2.各球種の打球特性から見る4シームの長打のリスク
3.リスクが高い4シームは投げない方が良いのか
1.球種による起こりうるイベント割合
投手は、打者や状況などに応じて球種を選択して、失点を防ぐように投球している。その際に、最も恐れるのは本塁打や長打であり、リスクの低い空振りやゴロ球になるような投球を目指している。
そのためには、各球種を投げた場合のリスクについて理解することで、より戦略的に投球ができる。
表1.各球種の投球割合とイベント割合(MLB, 2020年データ)
Baseball Geeksより引用、筆者改変
この表を見ると、最も投げられている球種は34.2%と1/3は4シームであることが分かります。ストレートや速球などとも呼ばれる4シームは投球の中でも戦略の軸となる投球と言えるのではないでしょうか。
変化球を見てみると、空振りが最も多かったのはスライダーであることがわかります。約3球に1回は空振りを誘うことができると考えられます。
次に、ゴロが最も多かったのは2シームになります。2シームは4球に1回の割合でゴロ球を誘うことができる球といえます。
長打のリスクがある外野フライやライナーの割合が最も高いのは、4シームであることから、4シームは最も投げられているのに、最もリスクの高い球種となってしまいます。
参考:失点を抑えるイベントリスクを知る
これだけ見ると、4シームは危険な球種と言えるかもしれませんが、他の変化球が空振りやゴロなどを誘うことができるのは、4シームのスピードや変化量の違いによるものでもあると考えられます。
2.各球種の打球特性から見る4シームの長打のリスク
なぜ、他の球種に比べて、4シームは長打につながるリスクを持っているのでしょうか。長打につながる要因には、バレルゾーンと呼ばれる打球速度と打球角度がとても重要になります。
そこで、各球種から飛距離に及ぼす打球特性について見てみましょう。
表2.各球種の打球特性(MLB, 2020年平均データより)
Baseball Geeksより引用、筆者一部改変
この表を見ると、4シームが最も打球速度、打球角度、飛距離が高いことが分かります。その中でも、打球角度が最も高いことが外野フライなどの長打につながる要因なのではないかと考えられます。
一方の、2シームやスプリットでは打球角度が低いため、ゴロ球になりやすく飛距離も伸びにくいことが予想されます。表1と照らし合わせてみても、2シームではゴロが多く、スプリットでは空振りの割合が低いことが分かります。
バレルゾーンという観点から見てみても、4シームは他の球種に比べて長打のリスクが高いことが分かります。
3.リスクが高い4シームは投げない方が良いのか
ここまで見てくると4シームは最も投げられているのに、最も失点のリスクが高い球種であることが分かります。
単純に考えると、投げない方が失点のリスクを抑えられることは明らかです。
しかしながら、近年「フライボール革命」により、バレルゾーンがとても注目されるようになり、打球角度をあげるためにアッパースイングの選手が増えてきています。
アッパースイングが増加していることから、今後落ちる変化球はリスクが高くなる可能性が考えられます
一方の、4シームでは、回転数を高めホップ成分を増加させることで、ホップする球となり空振りやファールを狙いやすくなる可能性が高くなります。
また、4シームのような速く変化しない球があるからこそ、曲がる球や落ちる球の変化に打者は対応しなければなりません。
そのため、4シームはリスクがあるものの変化球と織り交ぜながら、構成していくことで打ち取ることができる投手へと成長することができます。
投手は、投球についてのトレンドだけでなく、バッティングについてのトレンドについても注目することで、より打者の心理を理解したピッチングができるのではないでしょうか。
引用・参考文献
- Baseball Geeks:速球は最も飛ぶボール?球種別で見られる打球特性とは(閲覧日:2022年9月3日)
- Baseball Geeks:【2021年】4シームはリスクが高い?最新データから球種別の特性を探る(閲覧日:2022年9月3日)