ランナーがいる場面でのピッチング →

投手の皆さんの中には、ランナーがいるといつもの投球ができない、という人もいるのではないでしょうか。

ランナーがいることで失点の可能性も上がるため、ピッチングに影響することが考えられます。

今回の記事では、MLBのデータを基に、ランナーの状況によって投球がどのように変化していくかをみていきます。

 

 

【この記事でわかること】

1.ランナーの有無で速球とスライダーの割合が変化する

2.セットアップポジションでも球速は落ちない

3.投手は追い込まれるほど速球の球速が上昇する

 

 

 

【目次】

1.ランナーがいることで投球に差が生まれるのか

2.球速が速いのは、ワインドアップかセットポジションか

3.ランナーの状況による球種の変化

 

 

 

1.ランナーがいることで投球に差が生まれるのか

 投手は、ランナーがいることによって、投球が変化するのかを考えるにあたって、投げる球種の割合が異なるのかを見てみましょう。

 

 

1.球種の投球割合へのランナー有無の影響

Baseball Geeksより引用、筆者改変

 

 

 この表を見ると、ランナーの有無で格段大きな差が生まれることがないことが分かります。

 細かく見てみると、4シームとスライダーではランナーがいることで、変化がみられると考えられます。ランナーがいないことで速球の割合が増え、ランナーがいる場合ではスライダーがやや増加する傾向にあります。

 ランナーがいることで、より進塁させたくないために、空振りを狙いに行くということが増えるのではないでしょうか。

 

 このイベントとリスクについては、他の記事でも紹介していますので、参考にしてみてください。

参考:4シームのリスクとは

 

 

 

2.ランナー有無による各球種の平均球速(2018MLBデータ)

Baseball Geeksより引用、筆者改変

 

 この表は、ランナーの有無によって、球速に違いがあるのかを示したものです。

 これを見ると、若干ではあるが、ランナーがいる方が球速が上がっていることが分かります。これまでの研究では、セットポジションの方が球速が遅くなると考えられていましたが、今回の結果では、ほとんどの球種でセットポジションの方が速くなる可能性が示されました。

 

 

 

2.球速が速いのは、ワインドアップかセットポジションか

 ランナーがいることで球速が少し上昇することが明らかになりましたが、そのランナーが何塁にいるのか、また一人なのか満塁なのかなど、状況によって球速は変化するのでしょうか。

 

 出塁状況と速球の球速との関係について見てみましょう。

 

 

3.出塁状況から見た球速の平均球速(2018MLBデータ)

Baseball Geeksより引用、筆者改変

 

 この表を見ると、ランナーがいない状況から満塁の状況へと、投手にとって追い込まれる環境になるほど、球速が速くなっていっているのが分かります。

 

 この球速が上がっているのにはいくつか要因があるかと思います。

  1. ピンチになるほど速球に力が入っている
  2. ランナーがいる状況の速球は、球速を上げることで空振りを狙っている
  3. 追い込まれる方が、より明確な目的をもって速球が投げられている

 

 様々な状況での投球が必要になりますが、ランナーがいる場合でも強気に速球を投げられる投手は、打者にとって脅威になるかもしれません。

 

 

 この速球のデータから見ると、ワインドアップとセットポジションで差があるというのも考えられますが、ランナーの状況によって球速が変化していると考えることが自然なのではないでしょうか。

 

 投手によってもワインドアップが速いということもあるので一概には言えませんが、投球練習の際には、追い込まれている状況を想定して、ピッチングすることも重要なのではないかと考えられます。

 

 

 

3.ランナーの状況による球種の変化

4.出塁状況の違いによる各球種の投球割合(2018MLBデータ)

Baseball Geeksより引用、筆者改変

 

 この表を見ると、4シームとスライダーの投球の割合が状況によって、変化しやすいことがわかります。

 

 4シームはランナーが増えるごとに投球の割合が減少し、満塁になると増加するということが分かります。

 スライダーは反対に、ランナーがいない状況よりもランナーがより三塁に近づいたときに投げられる割合が増えるのが分かります。

 

 これは、スライダーは空振り率が高いことから、三塁にランナーが近づくにつれて、よりリスクの低い空振りが多い変化球を選択していることが分かります。

 

 

 また、ツーシームでは、一塁にランナーがいる状況での投球が多いことが分かります。

 ツーシームは打たれた結果として、ゴロになりやすい特徴があります。そのため、ゲッツーを狙いやすくなることから、出塁時に状況によって選ばれるのではないでしょうか。

 

 

 

 本記事はランナーがいることにより、投球にどのような影響を与えているかをみてきました。とても大きな差はみられなったものの、ランナーの状況によって、空振りを狙うなどの戦略が変わってくる可能性は見られました。

 

 ランナーの有無で、どのような采配が良いのかは打者やクリーンナップなのかといった状況によっても変わってくると思います。

 ぜひ、プロ野球ではどう配球しているのかなどに注目してみると、面白いと思いますので、新たな楽しみ方を見つけてみてください。

 

 

 

引用・参考文献

  1. Baseball Geeks:ランナーがいる場面で投球はどう変化するのか(閲覧日:2022814日)
  2. Baseball Geeks:ランナーがいた方が球速は上がる?状況別に投球を分析(閲覧日:2022814日)
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